世界陸上2日目で観たボルト

2017年8月5日

昼間は、トラファルガー広場近くの「ナショナル・ギャラリー」に。こちらもまた宮殿のような建物で、内部も床から天井から壁から、どこを見ても素晴らしい。以前行ったパリの「オルセー美術館」ほどではないにしても、フランス印象派の名作がゴロゴロといった感じで展示され、目を休める暇がありません。さすが“大英帝国”!

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今回、柄にもなく、2日連続で美術館を訪れたのは、ほかでもない家人の体が言うことをきかないためです。こうした施設に行くとかならず車イスが用意されており、楽に動き回ることができます。元気なら、あちらこちら見物や買い物に行けるのですが、そうもいきません。そこで、室内の施設に行き先を絞ったわけですが、すわっている家人のほうはまだしも、後ろからそれを押す私のほうは不慣れもいいところで、あっちにぶつけ、こっちをこすりといった感じですから、家人もさぞかし疲れたことでしょう。さほど遠くない将来、実際に自走式の車イスのお世話にならないという保証はありません。そのときのための、いうならば“予行演習”だったと思いましょう。

IMG_1124今日は、たまたま同じ時期に日本からやってきていたAさんご夫妻とIさん──どちらも「北前船寄港地フォーラム」などの折、顔を合わせている親しい方々です──と一緒に世界陸上を観戦しにいくので、セントパンクラス駅構内のショッピングモールで待ち合わせました。このモールの中にピアノが置かれていて、通行客が自由に弾くことができるのですが、ピアノの心得があるIさんがそれに気づき、何曲か演奏すると、まわりの通行人も足を止めて聞き入っていたのが印象的でした。

私たちも含め5人で、前日と同じように地下鉄を乗り継ぎストラッドフォードの駅まで。そこから「体の不自由な人のための」シャトルバスに乗ってスタジアムまで行くのは前日と同じ。早めにホスピタリティー・エリアにも入ることができ、いよいよ男子100mの準決勝、そして決勝になりました。ユセイン・ボルトのラストランです。日本のメディアはボルトの名を「ウサイン」と言っていますが、これは「Usain」をローマ字読みしているから。現地では「ユーセイン」と発音していました。

そのボルト、準決勝こそ1位で通過したものの、決勝では3位。残念な結果に終わりましたが、それでも場内の観客はボルトにありったけの拍手喝采を送ります。それはそれでいいのです、ワリを食ったのは優勝したジャスティン・ガトリンです。世界陸上ではなんと12年ぶりで優勝──中長距離ならまだしも100mですから、大変な快挙です!──したのに、まったく無視されたまま。

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そもそも、スタート前の出場選手紹介の段でもガトリンの名前がコールされると大ブーイングが起こっていたくらいです。ボルトより先に1位でゴールしたあとはそれがいっそう強まりました。これには私も家人も疑問を抱きましたが、イギリス人というのは、スポーツに対してはとことん「フェアプレー」を求めるようです。ドーピング違反でそれを破ったことがあるガトリンに対しては、「絶対許すまじ!」という気持ちがやはり強いのでしょうね。

 

それにしても、今大会のジャマイカ短距離陣の不振は深刻のようです。このままでは男女とも、100mはメダルなしに終わりそう。代わりに、アイボリーコーストとかボツワナ、南アフリカといったアフリカ勢の台頭が目立ちます。すべての種目で、以前とは勢力分布が大きく変わりそうな予感がしてなりません。また、それがまた「世界陸上」の興趣をいっそう高めてくれるので、私たちも目が離せないというわけです。