内容もさることながら、造本の妙味を感じさせられた本

2017年3月5日

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津田久美子さんの『ルワンダに灯った希望の光─久美子のバナナ和紙』という本ができ上がり、版元から見本が届きました。四六判並製・240ページオールカラーで、著者の心やさしさがそのまま伝わってきそうな親しみやすいカバーが、まず目をとらえます。ページをぱらぱらめくると、本文用紙のやわらかい感触が指先に伝わってきます。ふんだんに使われているカラー写真の発色がとても素晴らしく、それだけを追いかけていても飽きが来ません。みごとな仕上がりで、この1年間、その編集にたずさわってきた私にとってもうれしい一書になりそうです。

版元の書肆侃侃房【しょしかんかんぼう】さんは、15年来親しくさせていただいている田島安代さんが営む福岡の会社。柔軟でふところの深いセンスには日ごろから敬服していたのですが、今回の本で見せてくださった本づくりに、その思いをますます深くしました。というか、「造本」ということの意味合いを改めて考え直させられたように思えます。

どんな本も紙に印刷するのですが、紙といっても、写真集や画集に使うアート紙、漫画雑誌に使われているザラ紙、それと普通の本を印刷するための書籍用紙(「コート」とか「マットコート」「上質紙」「特殊紙」とかさまざま)など千差万別。広告チラシのように1枚こっきりではないので、ページを繰るときの感触が、その本のテーストにも大きく影響してきます。また、本文の印刷に使われるインクとの相性、写真や図版の映え・色の乗りなどとの関わりも含め、紙選びは本の命を左右するといっても過言ではありません。

年か8万点を超える新刊本が出版される昨今の出版界にあって、そうしたことにまでこまかく気を配る版元は少ないように思えます。しかし、田島さんのところは、そのあたりが違います。結果、そのテーマ、内容にぴったり合った造本がなされ、手に取った読者を、より心地よくしてくれるのです。いい洋服を試着したときの感覚と似ているかもしれません。
そして、ページを繰りながら読み始めると、その段階でも読み手はさまざまな感想を抱きますが、この本の場合どうでしょうか。編集者としてはとても気になる部分です。

 

内容は──。販売促進用に作られたチラシの言葉はこんふうになっています。
50代後半で一念発起、大使館勤めを機にアフリカへ。
舞台は、凄惨をきわめた内戦のあと国家再建の途上にあるルワンダ。
経済格差に苦しむ農民を支援したいと「エコ・バナナペーパー」を開発し、
新たな雇用の創出に汗を流す著者12年間の奔走記。

ちなみに、著者の津田久美子さんは、私の仲人を務めていただいた方です。些細ではありますが、ご恩返しができたような気がします。いや、売るための算段をしなければそうはならないかも……。