奈良の旅②地形・地勢の影響? 決意をうながす吉野山、おだやかな飛鳥

●奈良2日目は、今回のメインイベント=「蔵王権現」の見学。最初この4文字を目にしたときは、樹氷で有名な蔵王周辺のお寺かと思ったほど無知でした。それが祀られている吉野山の金峯山寺[きんぷさんじ]を開いたのは修験道[しゅげんどう]の創始者・役小角[えんのおづね]だともいうので、出羽三山と関係しているのかもなどと、勝手に思い込んだり。
●わが国最大の秘仏蔵王権現が開帳されるのは5年ぶりのこと。詳しくはネットに出ていますが、今回見に行こうと決めたのは、広告の写真に見たその色。この種の像としては稀有な青黒[しょうこく]に塗られており、強烈な印象を与えます。こんな色をした仏像はほかに知りません。
●吉野山といえば古くから桜と杉で有名ですが、後醍醐天皇が京都から朝廷を移し、南朝を開いたことでも知られています。なぜ吉野山だったのか、考えてみると不思議な気がします。華やかな都から遠く離れ、右を見ても左を見ても杉ばかり。わかりやすく言えばとんでもない僻地です。ただそれだけに、後醍醐に付き従ってきた公家や武士たちも諸々の雑音に動揺することなく、再起・復活の決意を固めていったのではないでしょうか。地形・地勢が人の心理・行動に強い影響を与えるのかもしれません。
●吉野山を下って到着した飛鳥でその思いはいっそう強まりました。それは、588年創建という日本で最初の寺=飛鳥寺で、日本最古の仏像=飛鳥大仏(釈迦如来坐像)のにこやかな微笑みを真近で観たときです。こんな表情を刻めるのは、四方が真っ平らでおだやかな空気が流れる飛鳥だからこそでしょう。すぐ近くの高松塚壁画館で見た古墳の壁画に描かれていた男女の顔もそうでした、それと、古民家をリノベした和食の店で食べたランチのなんともマイルドな味わいも、そうした考えに導いていったのかもしれません。(2021/11/28)

Facebook Post: 2021-11-30T17:24:27